「エントロピー増大の法則」は皆さん一度は聞いたことがあると思います。 自然な形で系の状態が変化するとき、その系のエントロピーは減少することはなくて、 運が良ければ不変、大抵の場合は増大します。
しかしながら、
であり、系の状態がいろいろなプロセスを経て変化しても、 もし最終的に元の状態に戻るのであれば、エントロピーの値も元に戻るはず、 つまり不変なはずです。
理想気体で言うならば、状態方程式から判るように、系の独立変数は二つです。 例えば圧力と温度を決めてやれば、体積・内部エネルギー・エントロピー・ エンタルピー・ギブスエネルギー・ヘルムホルツエネルギーは一意に決まります。
このことをしっかり頭に入れておかないと、「不可逆過程」という 言葉を聞いただけでエントロピーが必ず増大するという
を出してしまいます。 次のやりとりは、筆者タヌキが学生の時にやらかした間違いをほぼそのまま再現したものです。
教官T:「ある気体系に不可逆な熱サイクルを用いて仕事をさせ、 もとの状態に戻した。 気体系のエントロピーは仕事の前後でどうなっていると思う?」
タヌキ:「不可逆過程を使っているので増大します!」
教官T:「ブー!」
用語だけに惑わされてヘンな勘違いをしていないかどうかを確かめるには いい質問だと思います。熱力学を理解できていなかったタヌキはひっかかりました。 まぁ、教官もひっかけようとして意図的にやったことなのですが、 こうも見事に穴に落ちるのは予想外だったようで、 後からこっそりと…
(気をとりなおして)念のためにもう一度書きますが、
です。では先に挙げた、教官T先生の質問にあった気体系+不可逆熱サイクルについて、 エントロピー増大の法則はどこに適用されるかと言うと、 気体系と熱サイクルを合わせたものです。増えたエントロピーはすべて 気体系に仕事を行なった不可逆熱サイクルが引き取っています。
中身をよく理解しないまま 「エントロピー増大の法則」という言葉だけを 記憶していたためにやらかした、
今となっては恥ずかしい間違いです
(昔だったとしても恥ずかしいやろっ…て言わんでください)。タヌキはこれを
と呼んでいます。呪文にひっかからないように、くれぐれもお気をつけください。