熱力学の初歩でコケた人へ

実はこのページを初めて作成したのは1997年です。 諸般の事情により、2000年(あたり…多分…)以降は 非公開にしておりました。 筆者タヌキもそろそろ定年が近いため、 加筆・再編した上で再びここで公開することにいたしました (「諸般の事情」も書くつもりだったのですが、 めんどっちくなったので略)。



熱力学を初めて学習したとき、一発で全貌が掴める人はそう多くないと思います。 たいていの場合、

話はどうにかフォローできるが、なんとなくモヤモヤする


という感触を持ったのではないかと思います。ホントに理解できたんやろか?とか、 数式の導出が全部自力で出来んかったら解ってないんとちゃうやろか…とか。

筆者タヌキも、もちろんその一人でした…と言うより、数式が多くて 何がなんだかわけワカメ…な状態でした。 この文書は、そのようなモヤモヤした感覚をできるだけ少なくしたい… という目的で作成しました。 対象とする読者は、上記のような「モヤモヤ感」を持った人たちです。 エンタルピー・エントロピー・自由エネルギーなどについて、 一度は読んだことがあるということを想定しています。

この文書は、熱力学を初めて学ぶという人には向いていません。 あくまでも、一度コケた経験を持つ人を想定しております。 熱力学は初めて、という人は、「正統派」と目される教科書を 一度読んでください。その場合、「全部解るまで何度も読んでやる!」と言って 頑張る必要はありません。正統派テキストを読んで理解できた場合、あるいは コケた後で自力で立ち直ることが出来た場合であればこの文書は不要です。 用語すら知らない状態では、この文書も理解できませんので、 最低限の予備知識は入れておいてください、ということです。

☆ 何故「モヤモヤ」する?

まず上記の「モヤモヤ感」の原因(であろう)と思われる事を2点挙げておきます。

  1. 変数が多くて、相互の関係式がたくさんある。
  2. 微分方程式がたくさん出てくる(特にMaxwellの関係など)のでヤだ。

こんなものではないでしょうか? 主な熱力学変数は8個ですが、 そのうち独立なものは、単相系においては2個しかありません。 変数が多いのに独立なものが少ないということは、 変数どうしの関係式が多くて当然です。

これは熱力学変数の性質上、仕方ないことなのです。

☆ 逆手にとって、大前提として認めましょう

しかしながら、先に挙げた二つの「モヤモヤ要因」については、 裏返せば次のようにも言えます。

  1. 独立変数は(単相系では)たった二つしか無い。2個で片付く!
  2. 微分方程式を使ったほうがすっきり記述できて、
    変数の「ふるまい」が見やすくなる。

このように考えれば、いわゆる「2変数関数」のイメージさえ持ってゐれば 大概の数式は理解できるのです(ちょっと言い過ぎですが)。

というワケで、以下5項目にまとめました(ひとつは工事中ですが)。 中心課題は(4)「Maxwellの関係」です。 お気楽に読んでいただければ幸いです。


  1. 準備体操の前に:「式の丸暗記はオススメしません

  2. 準備体操1:「エントロピー増大の法則」(数式無しのページです)

  3. 準備体操2:「ギブスの「自由」エネルギー、何が「自由」?」(数式は少しだけあるページです)

  4. メインテーマ:「Maxwellの関係式」(pdf文書が主体、数式 出まくり)

  5. 落穂拾い:「活量て何?」(数式あり)